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大阪高等裁判所 平成10年(行コ)7号 判決 1999年4月28日

京都府亀岡市北河原町二―一―一一―一〇三

控訴人

小島明

右訴訟代理人弁護士

吉井昭

水野武夫

大阪市中央区大手前一丁目五番六三号

被控訴人

東税務署長 奥田純

右指定代理人

塚原聡

吉川壽一

山本弘

新谷修一郎

村松徹哉

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実及び理由

第一申立

一  控訴人

1  原判決を取消す。

2  被控訴人が控訴人に対してなした平成六年一月三一日付平成四年分贈与税の決定処分及び無申告加算税の賦課決定処分(以下併せて「本件処分」という)を取消す。

3  訴訟費用は第一、二審とも被控訴人の負担とする。

二  被控訴人

主文と同旨。

第二事案の概要

次のとおり当審新主張を付加する他、原判決記載のとおりである。

「仮に昭和三三、四年ころの小島印刷所が控訴人の単独事業と言えないとしても、実質的に見て控訴人と創一郎の共同事業であったから、本件土地の購入資金のうち一二〇万円の半額は控訴人に帰属し、四〇万円は金次からの借入で控訴人が調達したものであるから、本件土地の八分の五は控訴人に帰属する。」

第三証拠関係

原当審訴訟記録の証拠関係目録記載のとおりである。

第四判断

一  次のとおり付加訂正する他、原判決説示のとおりである。

1  一九頁二行目の「昭和三七年には」を「昭和三七年には本件建物につき」と、三行目の「いずれも昭和四一年」を「昭和四〇年」と、「四四年には」を「四四年には両者につき」と、二三頁二行目の「所得が」を「収益が」と、二五頁四行目の「けれども」から六行目の「なお、」までを「が」と改める。

2(一)  小島印刷所の昭和三三、三四年度の収入は、実質上、控訴人が上げたものであり、控訴人において生活費等に自由に費消していたとしても、創一郎の寄与が全くなかったとは認めがたく、それ故、事業主である創一郎の所得として確定申告され、同人のためにも使われていると認められるのであって、これらの事実によると、創一郎や控訴人間が、右年度における小島印刷所の収入の全てが控訴人に帰属すると認識していなかったことは明らかである。

そして、控訴人に帰属する小島印刷所の収入を原資とし、本件土地を買ったのであれば、本件土地の所得権移転登記は控訴人に対してなされる筈であり、これを妨げる事情も窺えないのに、右所有権移転登記は創一郎に対しなされているのである。

以上によると、創一郎と控訴人間において、小島印刷所の右収入は創一郎に帰属するものとされていたと認めるのが相当である。

(二)  控訴人は、小島印刷所は創一郎と控訴人の共同事業であるから、小島印刷所の収益の半分は控訴人に帰属すると主張する。しかし、創一郎と控訴人間において、小島印刷所の収益を折半する旨の合意があったと認めるに足りない。

(三)  また、創一郎が本件土地売買の買主となり、所有権移転登記も同人に対しなされていることに照らすと、創一郎と控訴人間において、右売買代金の原資の帰属如何を問わず、本件土地は小島印刷所の用途に当てるため、創一郎の所有とする旨の合意がなされた(尤も、創一郎は本件土地建物を将来は控訴人に与えることを考えていた〔甲六五〕)と推認されるところである。

そうすると、控訴人において、本件土地の売買代金のうち四〇万円を金次から調達したとしても、本件土地は創一郎の所有に帰したということになる。

3  控訴人は、本件土地建物が創一郎(小島印刷所)の事業用であるならば、本件建物につき減価償却費が計上されるべきであるのにされておらず、修繕費も控訴人が負担してきたから、本件土地建物は控訴人の所有であったと主張する。

しかし、控訴人は、昭和六〇年、創一郎から本件建物の贈与を受け、その旨の税務処理をしているのであって、右が事実に反する処理であったことを前提とする主張はたやすく採用することができないのみならず、本件建物の修繕費の全てを控訴人が負担したとは必ずしも解されず(甲一三の四、一四の一、三、一五の二、二九ないし三一)、また、本件建物につき減価償却費を計上していないことの一事をもって、本件土地が創一郎(小島印刷所)の事業用でなかったと即断することもできない。

二  よって、原判決は正当であり、本件控訴は理由がない。

(裁判長裁判官 蒲原範明 裁判官 永井ユタカ 裁判官 宮本初美)

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